【感想】「推し」で心はみたされる? 21世紀の心理的充足のトレンド

 「推し活」に悩むすべてのオタクにオススメです。

 

 昨今、「推し活」という言葉は、資本主義との相性の良さから色んな場面で出くわす機会が多くなってきました。しかし、一人の三次元オタクの感覚として断言すると、「推し活」は楽しいことばかりではなく、むしろ辛いことの方が多かったりします。この本は、そんな「推し活」に迷えるオタクに対して、自己心理学のワードを活用しながら、「どのような考え方に基づいて日々の生活を行うと真人間になることができるか」を指南する圧倒的光属性の本だと感じています。

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 少し自己紹介をさせてください。夢も希望もなく人生が分からなくなっていた頃に出会ったのが、私の推しです。テレビに映る推しの応援ソングは、荒んだ私の心を浄化するには充分でした。一時期は、グッズを買いあさったり、ラジオや生放送を聞きあさったりしていて、推しの好きなものを言い当てられるくらいには推し事にハマっていました。今考えると、それは「鏡映自己対象」と「理想化自己対象」と「双子自己対象」を同時に満たしてくれる存在だったのだと分かるのですが、まあ当時は大変だったわけです。推し事によって、徐々に心が満たされていったのですが、ずっと「何かが足りない」とも思っていて、色々とインターネットを調べていました。その中で知ったのが、シロクマ先生のブログです。特に、そうしてアスカは神になった――ある“心の神棚”ができあがるまで - シロクマの屑籠という記事には感銘を受けました。自分と似た価値観を持つオタクの先駆者がいらっしゃって、しかも精神科医であり、社会適応の方法について書いていらっしゃる。私は、ブログの内容を少しずつ勉強させていただき、心をよりよく保つには、「推しを自分の心の神棚に祀って社会適応すること」だと思うようになりました。現在でも、「推し活」自体は続けていますが、「自分の物語を豊かにするために推し活をする」という考え方のもと、自己研鑽に励むようにもなりました。

 

 改めて、本の感想に戻ります。第1~3章までは、ブログで勉強させていただいた、コフートマズローの考え方を、現代の「推し活」に当てはめて考察されています。ここは古傷を抉られるところですが我慢して読みました…… 第4章は、真人間に戻るための具体的な方法が書かれています。これは、ブログでもあまり書かれていなかった(書かれていらっしゃったらすみません🙇‍♂️)話なので興味深く読ませていただきました。第5章は、ライフステージを経て必要になる考え方です。個人的には、この章は自分にはまだ早いかなと感じました。結論、自分の人生の過去・現在・そして未来を表していて、人生のバイブル書という感じです。推し事は楽しいですが、それだけに逃げることなく、リアルとしっかり向き合っていきたいですね。

 

 最後に、シロクマ先生に感謝をさせてください。「推しを自分の心の神棚に祀って社会適応すること」のスローガンは、想像以上に私の心を豊かにしてくれました。夢も希望もなく人生が分からなくなっていた頃は、社会のすべてが敵に見えていました。今でも当時の感覚は残っていて、ジョーカーや青葉容疑者のような人々にも一定の共感ができてしまうほどです。それでも私が社会からはみ出さなかったのは、シロクマ先生のブログや、推しのおかげです。当時の狂気のような推し事で洗練された「推しの解釈像」は、社会適応の軍旗のような役割を果たしてくれて、不思議なことに、社会で生きやすくなっていったのです。あれほど嫌いだった社会で、普通に居場所が見つかり、自分の価値観がおかしかったのだと気づくことができました。リアルの生活はもちろん、推し事によって繋がったインターネットでの友達との縁もでき、今が一番、心の豊かな生活が送れていると断言できます。

 本当にありがとうございました!これからもこの本を人生のバイブル書として、生かしていきたいと思います。