Triptych Symphony に込められたメッセージについて語りたい

らぷりアドベントカレンダー14日目の記事です。

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はじめに

 初めまして。soitan と申します。声優のオタクを長らく続けてきましたが、ひょんなことから La prière を知り、ファンになりました。(なゆふぁんず兼らぷりす)

 

 La prière はライブ映えする楽曲群が特に魅力的ですよね。「進め!ラブリーアイドル☆ラプリエール」のような王道のアイドル系ソングから、「永訣のGemini」のようなアニソン風の音楽、「Sweet Dreams」のようなK-POPっぽいもの、「アルビレオ」のような美しいバラードまで、La prière が扱う音楽は非常に多岐のジャンルに渡っています。

 こうした楽曲群は、物語性のある音楽という点で一貫しており、La prière の音楽性を特徴づけることができると感じています。2ndアルバムまではアルバム単位で物語を表現しており、1stアルバム『Gemini Syndrome』ではふたご座神話をテーマにした二次創作、2ndアルバム『Galaxy Triangle』では少女たちの“願い”を巡る物語を歌っています。3rdアルバム以降は、楽曲ごとにテーマが異なっており、テーマに沿って歌い分けられています。

 

 そんな数ある La prière の楽曲群の中から、今回は「Triptych Symphony」を取り上げたいと思います。「Triptych Symphony」は有志が開催した「好きならぷり曲10選」ハッシュタグ企画にて、投票したファンの2人に1人が推薦している、圧倒的1位を獲得した人気な楽曲です*1。この楽曲は nayuta さんの作詞/作曲に、コーラスに定評のある かそかそさんの作曲/編曲が加わっており、まさに“最強タッグ”で作られている楽曲と言えるでしょう。

 しかしながら、素晴らしい「Triptych Symphony」の世界観について、まだ十分に分析が進んでいない印象があります。La prière は物語性のある音楽を得意としていますから、この楽曲においても、らぷりすに対して何らかのメッセージを含んでいるはずです。そうしたメッセージが、歴戦のなゆふぁんずには自明なことであったとしても、らぷりすの中で広く知られていないとしたら、とても勿体ないことだと感じるのです。

 本稿は、「Triptych Symphony」の歌詞を引用・解釈しながら、この曲に込められているメッセージを読み解くことを試みます。nayuta さんのソロ活動におけるオリジナル楽曲「蒼のキャンバス」の歌詞と比較しながら、「Triptych Symphony」が nayuta さんの音楽活動における世界観を踏襲していることを明らかにしていきます。そして、2つの楽曲における差異を捉えることで、Triptych Symphony」が nayuta さんの世界観を通じて、La prière の楽曲へと昇華されていることを示すのが、本稿の目的となっています。

注意: 楽曲の解釈は人それぞれだと思います。この記事の内容はあくまで1つの解釈として受け取っていただけますと有難いです。

 

 

歌詞について

 以下、La prière 楽曲の歌詞について解釈するにあたり、引用は最小限にとどめる必要があるため、全文を記載することができません。TuneCore 様の歌詞サイトで歌詞を確認いただきながらお読みいただくことが望ましいです。

linkco.re

 

終わりの世界から協奏曲を

1番Bメロ:

激しい雨に撃たれ 涙枯れ果てても
降り注ぐ戦火に包まれても

たった一つ
暗闇の中で見つけた旋律
運命を変えて

 まずは「Triptych Symphony」の歌詞を見ていきましょう。サムネイルのイラストから、舞台は中世ヨーロッパでしょうか。激しい雨、戦火、暗闇というワードから示す通り、「戦争によって荒廃した土地で生きる少女たちが、音楽に希望を見出す様子」が歌われています。運命を変えるために、少女たちは何をするのでしょうか。

 

サビ(一部):

数多 駆け巡る祈りたち
響き合い 君を待ってる
この歌は奪えない
この音は君を呼ぶから

 La prièreが、「君に気づいてもらうまで歌い続け」ています。La prière ≒ 「祈り」のフランス語であるため、「駆け巡る祈りたち」とは、「La prière 3人の歌」と解釈することができるでしょう。荒廃した土地に La prière の歌が響き渡り、誰にも奪うことはできません。運命を変えるために、君を必要としているのだとわかります。

 

ラスサビ(一部):

廻り出す 変わる
運命の輪が
重なって響き合うから
確かに 目の前に
Ah 届け胸に今を

 2番、Cメロと続き、ラスサビでは遂に「君」と出会うことができたようです。「La prière の運命」と「君の運命」の輪が重なり響きあうことで、新たな始まりを予感させる結末となりました。

 

 「Triptych Symphony」の歌詞を簡単にですが解釈してみました。この詩は、暗闇の中で見つけた旋律をLa prière 3人が奏でて歌い続けることで、愛や祈りを届けて運命を変える、終わりの世界から新たな始まりへと誘うテーマを描いています。

 「Triptych Symphony」を一言で表せば、「今、ここで歌っている」*2ということに尽きます。La prière が1回きりのアルバム企画に終わることなく、今もユニット活動を続けているのは、予想以上に反響のあったファンの熱意に突き動かされたためだと、3人は度々お話しされていて、そういったファンの声をとても大切に感じているからこそ、La prière の歌がもっと色々な人に届いてほしいという願いを込めて、「今、ここで歌っている」よ、と「Triptych Symphony」を作詞したのではないかと推測しています。

 ところで、「Triptych Symphony」を「今、ここで歌っている」と表現しました。実は「今、ここで歌っている」というテーマは、 nayuta さんのオリジナル楽曲にも表れています。 nayuta さんのリリース楽曲の中から、「蒼のキャンバス」を取り上げて紹介したいと思います。

 

私が生きている証を響かせ往くんだ

www.kkbox.com

 nayuta さんのオリジナル楽曲「蒼のキャンバス」は、nayuta 15th Anniversary Memorial Album『Portray Blue』に収録されている楽曲です。初めて聞いた時に涙を流してしまい、今では、私の人生で5本の指に入るほど大好きな楽曲になりました。そんな「蒼のキャンバス」の歌詞も見ていきましょう。

 

1番Bメロ→サビ:

「好きな色を使っていいよ」
小さい頃の私が駆けた

描け 夢の続きを今 キャンバスに
過去も未来もすべて色めく

 「蒼のキャンバス」では、夢をキャンバス(油絵を描くための布)に喩え、幼い頃は好きな色を使って自由に描けるほど夢を見ることができたと、自分の人生を振り返っています。サビでは、幼少期の記憶を再び思い出し、もう一度夢の続きを描こうと歌っています。

 

2番Aメロ:

少し大人になった私は
あの日描いた色になれなくて
ゆるやかに青は蒼に変わって
視界を覆い尽くした

 2番Aメロでは、過去から現在の状況を俯瞰しています。社畜日々の生活に追われる毎日を過ごすことで、自分の夢について考える時間が無くなってしまい、かつて夢見ていた将来の自分になれていない現状を憂いています。ではそんな運命を変えるために、何をするのでしょうか。

 

2番サビ→Cメロ(一部)→ラスサビ:

歌う 誰かに届くように
私が生きている証を響かせ
往くんだ

(中略)

今 変わる

(中略)

君へのメロディ 届けて 青へと変わる
だからもう諦めたりしない
ずっと一緒に歌って 描いて

 2番サビでは、生きている証を残すために「誰かに届くように歌う」と心に決めています。夢を諦めて後悔する毎日から脱却するためには、「今」変わらないといけません。ラスサビでは、「ファンと一緒に歩んで、もう一度夢に向かって挑戦する」と決意表明しました。*3

 

 「蒼のキャンバス」の歌詞を簡単にですが解釈してみました。この詩は、夢をキャンバスに喩え、幼い頃は好きな色を使って自由に描けるほど夢を見ることができていましたが、大人になった今は夢のキャンバスを描けていない現状を憂いていました。「蒼のキャンバス」の蒼は、そんな情景を表しており、もう一度「君と一緒に歌う」と夢を描き決意するテーマを描いています。

 「蒼のキャンバス」を一言で表せば、「今、ここで変わる」ということに尽きます。2022年当時、nayuta さんは社会人と同人音楽活動を同時並行で行っており、多忙な日々を送られていたと推察できます。自分の気持ちに向き合い、ファンの応援に応えるためには、音楽活動に専念すると決意したかったのだと推測しています。そんな想いをダイレクトに言われてしまうとシンプルに泣いてしまいます。涙が出ますね……

 

この音は君を呼ぶから

 ここまで「Triptych Symphony」の歌詞と「蒼のキャンバス」の歌詞を解釈してみました。どちらも「今、ここ」であることが重要で、nayuta さんの世界観を反映していますが、「今ここで変わる」ことに力点を置いている「蒼のキャンバス」と異なり、「今ここで歌っている」のを重視しているのが「Triptych Symphony」でした。両者の違いは、もう一度夢を描いて歌いたい「蒼のキャンバス」と、La prière の歌をもっと沢山の人に知ってもらいたい「Triptych Symphony」の違いによるものでした。

 「Triptych Symphony」が nayuta さんの世界観を通じて La prière の楽曲へと昇華されていること、nayuta さんの La prière に対する祈りが「Triptych Symphony」に込められていることが伝わったでしょうか。この記事で「Triptych Symphony」がもっと好きになる、そのお手伝いができたら嬉しいです。

 

おまけ1

 宣伝です。私が La prière について考察した記事を寄稿させていただいている ジリィスタイル Vol.3 を11/11 に行われた文学フリマ東京(税込900円)で頒布していました。(私の記事を含む全18章+コラム)

 もしご興味のある方は私の X(旧Twitter) までご連絡ください。らぷり東京(延期公演会場)でお渡しできます。その他、この記事が良いなと思って下さった方は、お気軽にX(旧Twitter)へフォローください。

 

 寄稿記事「リアルとバーチャルを行き来する同人音楽 ーLa prièreのこれまでとこれからー」(約12,000字)

 VTuberと音楽に関する先行論考を参照し、La prièreの魅力に迫ります。*4
 内容は、論考、おすすめ楽曲、ライブ感想の3本立てです。おすすめ楽曲は3人のソロ活動の楽曲も紹介しています。らぷりすの皆様におすすめです!!!

 

おまけ2

  • ア-イ-レンノオトメタチヨ ダンダンダン  ヒビカセット←早くこれになりたい
  • そういえば、蒼(草木の茂っているさま)と青の唄ってどこかで聴いたことがあるなと思い出し、この記事を書きながらさらに号泣してしまった……絵を描くことが好きな僕、きっと偶然ですよね。セトリもなんか繋がってた気がするけど……

 

 

 

*1:https://x.com/bit_Etris/status/1685672464242847744

*2:11月の定期配信 (【告知あり】11月のこんぷりえ~る🌟【#らぷりえーる】 - YouTube ) にて、なくちゃがなゆたさんの音楽をこのように評しており、言い得て妙だなと感じたので使わせていただきました。

*3:1番Aメロ冒頭では、“もしも歌を歌っていなければ 私は存在していなかった”“いつかどこかの誰かへと 届く歌があるといいな”と語っており、「いつか」「どこかの誰か」だったのが、ラスサビでは「今」「君」へと変化している。なぜなら「君へメロディを届けることが夢だったとわかり、諦めたくない理由になったので、君と一緒に歌いたいし、夢を描きたい」からだという。エモ散らかして涙。

*4:らぷりがVTuberかどうかは諸説あるが、VTuberを「アニメルックなアバターを使って活動するエンターテイナー」と定義するなら、らぷりはVTuberで良いと思う。黎明期ならともかく、2023年にもなって、「3Dが無いから」「Live2Dが無いから」では、VTuberではない理由にはならないだろう。