【私模様 テクスチャー】山吹沙綾がバンドを続ける理由

ミッションライブイベント「私模様 テクスチャー」から山吹沙綾がバンドを続ける理由にフォーカスしていきます!
沙綾が主体のイベントストーリーは非常に珍しく、掘り下げていただきありがとうございますという感じです。

「私模様 テクスチャー」は沙綾以外にもたくさんのキャラが登場し、それぞれのキャラを色濃く反映した物語が進むため、ぜひ一度読んでみることをお勧めするイベントストーリーです。

※ネタバレ注意

 

 

あらすじ

Poppin' Partyは新しく始めた趣味の話をします。香澄、たえ、りみ、有咲がそれぞれ自分の新しい趣味について語りますが、沙綾だけは新しく始めた趣味が無く、ポピパのみんなが羨ましくなったみたいです。そんな話を聞いたモカは、沙綾に新しい趣味を見つけることを提案します。
友希那、こころ、麻弥、はぐみ、薫、千聖、彩とジャグリング、トランポリン、電子工作、社交ダンス、ボルダリングなどを試しますが、どれもしっくりこなかったようです。

最終的に沙綾はカメラを趣味にすることにしましたが、どんな心の変化があったのでしょうか。イベントストーリーを引用しながら趣味に対する考えを振り返り、沙綾がバンドを続ける理由を深掘ります。

 

新しい趣味を探したかった理由

そもそも新しい趣味がなぜ欲しかったのか。
千聖に聞かれた沙綾は理由を分析しています。

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沙綾もPoppin' Partyの一員なんだなあ…としみじみ思ってしまう返答です。

Poppin' Partyの「キラキラドキドキ」とは、「何かが始まる予感」だと説明されています。*1 「何かが始まる予感」がすれば夢や希望を語ることができる、Poppin' Partyの活動の源です。沙綾以外の4人は、新しい趣味から「何かが始まる予感」を察知しています。夢や希望にも繋がるため、どうしようもなく喜びを感じているのでしょう。

しかし沙綾は新しい趣味が思いつかず、4人と同じようにキラキラドキドキできません。沙綾が羨ましがる理由も良く分かるわ…という感じですが、これは当たり前ではありませんでした。ポピパに入る前の沙綾は、自分の欲求を抑える傾向にあったからです。ポピパ加入後もこの傾向はありますが、夢を見たいと考えられるようになっただけでも成長を感じられる場面ですね。沙綾の成長にとってPoppin' Partyは重要な存在です。

 

最も大切なものは居場所

沙綾が自分の欲求に遠慮がちなのは、居場所を守りたいという性格に起因しているのではないでしょうか。ここでの居場所とは、沙綾が精神的支柱としている繋がりです。元々は家族という狭い箱しか無かったわけですが、今ではポピパも居場所になっているようです。

居場所が破壊されそうになると、強くこの性格が影響して、時には悪い方向に進むことがあります。CHiSPA騒動は、家族とCHiSPA、二つの居場所が同時に破壊される選択を迫られ、沙綾はCHiSPAを辞めることで家族を守ろうとしました。

2章や2期も居場所が破壊される危機であり、これを回避しようと努めました。2章では香澄に対して働きかけることでメンバーの復帰を促しました。2期ではおたえを捨てる覚悟でポピパを支持することでポピパを守ろうとしました。*2

 

但し、この考えは判断を誤らせやすい。なぜなら、新しいことに挑戦する意志を阻害しやすく、外からの意見を軽視する傾向にあるからです。

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いつもの

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いつもの②

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友希那の助言により、沙綾は改めて趣味について向き合いますが、すんなり受け入れたのはなぜでしょうか。友希那の助言は1期を連想させるからだと私は考えます。

“影響された結果、新しい何かを始めたいと思ったのなら今が相応しいタイミングなんじゃないかしら”とは、STAR BEAT~ホシノコドウ~や1000回潤んだ空で語られている、夢に向かって諦めない心です。沙綾がポピパに加入する根幹に触れられては諦めることなんてできません。

ここからイベントストーリーはBanG Dream!の物語として展開され、沙綾の気持ちが語られていきます。

 

価値を感じることは何か

沙綾は写真という新しい趣味を見つけましたが、その理由は少し変わったものでした。

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沙綾における写真趣味とは、写真を撮る行為への楽しさではなく、「楽しかった時間」を友達と共有することへの楽しさだそう。「楽しかった時間」とはキラキラドキドキのことで、キラキラドキドキの体験を自分の居場所で共有することが、沙綾の何よりの幸せであるということです。

Poppin' Partyにとっての趣味はキラキラドキドキを生み出す源泉であり、そうしたキラキラドキドキが見つからず悩んでいた沙綾にとって、写真趣味とはまさに求めていた趣味であると言えます。

 

友希那が、“山吹さんの撮った写真は、どれも体験自体というよりみんなの活き活きとした表情を撮ったものばかり”と発言していますが、これも、写真という体験よりもキラキラドキドキを保存するものとしての写真、そのためのカメラという捉え方をしていることが分かります。

 

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出典: 星2白鷺千聖[カントリーフラワー]

また、カメラという装置の特殊性にも触れています。ファインダー越しの世界は特別なものである、と語っており、これは“非日常の力”と類似していますね。

ハロウィンイベで当ブログは、非日常の力は“日常ではない日常”と分析しました。*3 “非日常の力”をきっかけとして利用していけば、日常の大切さに気付くことができます。沙綾は性格的にどうしても本音を出すことが難しいですから、カメラという道具が抑制しようとする沙綾の理性を緩めます。カメラ撮影をきっかけにしてキラキラドキドキの追求をすることは、沙綾自身の成長に繋がるのではないでしょうか。

 

 カメラとバンドの類似性にも注目しています。

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出典: 星2白鷺千聖[カントリーフラワー]

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出典: 星2白鷺千聖[カントリーフラワー]

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出典: 星2白鷺千聖[カントリーフラワー]

カメラもバンドも自分の技術が向上していくことに面白さがあるけれども、沙綾にとってはそれ以上に、みんなと楽しさを共有することができる活動であることが共通しています。

つまり、「楽しかった時間」とはIではなくWeであるということですね。

 

【結論】沙綾にとってPoppin' Partyとは

沙綾にとって、バンドもカメラも目的ではなく手段。ある目的があって、それを達成するためにバンド活動やカメラ趣味を始めたということでした。その目的とは、居場所において「楽しかった時間を共有すること」。沙綾にとっての精神的支柱である家族やポピパの仲間たちと楽しさを共有することが、極上の幸せであるということです。

「楽しかった時間を共有する」ためにバンドを続けるという考え方は説得力があります。沙綾の成長は、「楽しかった時間」を自らの手で作りだしたり、「楽しかった時間」を共有する努力を続けることでしょう。そのためにバンド活動を利用していく、ということだと考えられます。

3期3話は、沙綾がStep×Step!を作詞作曲しました。夢に向かって突き進むための勇気を与えるこの歌は、沙綾の今までの行動の裏返しでもあります。六花という仲間のために「見てほしい、聴いてほしい」曲を作ることができる。沙綾とポピパの歯車がうまく噛み合うとこんな素敵な曲が完成するのですね……!

 

 

【Appendix】BanG Dream!の物語が読者に与える夢

山吹沙綾と直接関係していませんが、今回のイベントストーリーでとても素敵な物語がありましたので、最後に共有したいと思います。星2白鷺千聖[カントリーフラワー]から右エピソードの最後です。

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出典: 星2白鷺千聖[カントリーフラワー]

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出典: 星2白鷺千聖[カントリーフラワー]

今回、沙綾の趣味探しにガルパメンバーが集まって協力しました。千聖は子役時代を思い出し、自分も周りの人々の支えによって守られていたのだと気づきます。周りの人々が支えあう姿はそれだけで輝いていて、そうした輝きが集まることで、人は初めて大切な何かを手にするのではないか…と漠然と考えています。

私は、これこそがBanG Dream!なのではないかと思いました。BanG Dream!はキャラクターの物語も3次元リアルライブの物語もたくさんの人に支えられてできている。それが関係性を扱うバンドリ・ガルパの一つの最終形なのではないかということです。

関係性には特定のCPや各バンドの箱ももちろんありますが、そうした枠組みに囚われるだけではなく、人と人とが関係していくそのものが関係性なのではないでしょうか。関係性を維持し発展していく努力・関係性を絶やさない努力の難しさにバンドリの奥深さを感じずにはいられません。

 

 

*1:『キラキラドキドキ』という概念について https://ameblo.jp/rikkyo-bang/entry-12525618383.html

*2:2期11話の香澄と沙綾についての話 https://lativior381.hatenablog.com/entry/2019/03/30/030436

*3:Poppin'ハロウィンパレード♪感想や考察「非日常は日常?」https://lativior381.hatenablog.com/entry/2019/10/05/203642