夢を撃ち抜いたBanG Dream!

BanG Dream! 3rd seasonが終わってしまいました… バンドリ3期が毎週の楽しみだったのでとても残念です。コロナ禍でこれからどうなってしまうのでしょうか。

まだまだ先はわかりませんが、今回は1期から3期までを振り返ってポピパの歴史を振り返ります。内容が多岐に渡り、長文となっておりますのでご注意ください。

 

アニメ1期…Poppin'Party、香澄の夢を叶えるバンド

 

日本語版公式と英語版公式から考えるアニメ1期 

解釈が難しい1期ですが、視点を変えて英語版公式から考えていきたいと思います。

It’s hard to reach for the stars when you don’t know what inspires you, but thanks to a chance meeting between Kasumi and a star-shaped guitar, she finally understands her true calling! Kasumi becomes determined to form an all-girl band, and her search leads her to Saya, Arisa, Rimi, and Tae. Featuring live performances by the band Poppin’Party, Kasumi (played by the band’s lead singer, Aimi), prepares to take the stage and make her dreams of stardom come true, no matter the obstacles.

引用: https://en.bang-dream.com/anime/1st/ 

 

(意訳)

何が自分を奮い立たせるのかわからない時、星に手を伸ばすのは難しいものですが、香澄と星型のギターとの偶然の出会いにより、香澄は本当の願いを知ることになる。

ガールズ・バンドを結成しようと決意した香澄は、沙綾、有咲、りみ、たえの4人を探していた。バンド「Poppin'Party」のライブを中心に、リードボーカルの愛美が演じる香澄は、どんな障害があってもスターダムの夢を叶えようとステージに立つ。

この英語版公式から読み取れるのは、1期は一貫して香澄の物語であったということでしょう。1期はPoppin'Party(ポピパ)の結成を描いており、そうした側面があることは事実なのですが、あくまで側面であり、1期は香澄が夢を叶えるための途中(過程)を描いた物語であった、というのが1期のおおまかなストーリーといえます。

英語版公式に気になる記述があります。
まず、香澄はどんな夢を持てばいいのか分からず、星に手を伸ばせなかったことがあるということ。香澄がポピパのライブパフォーマンスを体現した存在であり、自身の夢を叶える準備としてポピパを利用しているということです。


続いて日本語版公式の説明を示します。

幼い頃、星空を見上げた時に聴こえた「星の鼓動」のように、
キラキラでドキドキなことをずっと探していた、香澄。

高校に入学したばかりのある日、
古びた質屋の蔵で出会った「星型のギター」に初めてのときめきを感じ、
ずっと閉じ込めてきた気持ちが走りだす。

同じように、輝ける場所を探していた4人の少女とともに。
ひとりじゃ出せなかった音だって、5人ならきっと奏でられる

引用: https://anime.bang-dream.com/1st/story/

日本語版でも香澄の説明が最初に来ていますね。1期はポピパの結成がメインではなく、あくまで香澄の物語に主眼を置いているということが分かりました。

 

1期のまとめ

1期のストーリーの要点を簡潔にまとめると以下の2つに分かれるのではないでしょうか。それが、バンド仲間の獲得やりきるということです。(1期のより詳しい考察は戸山香澄に関するチラ裏考察が参考になります。)

香澄は花咲川女子学園高校に入学します。妹の明日香が通っていた学校の高校に興味を持ち、わざわざ受験して入学しているんですね。そこまでこの高校に拘った理由はなぜか、実は理由が明らかにされていません。しかし動機があったことは確実です。それが“キラキラドキドキ”したいという動機でした。

キラキラドキドキを求めて部活を転々としますが見つかりません。帰り道、下を向いて歩いている人にしか気づけない星型のシールを見つけます。そのシールに導かれ、有咲とランダムスターを発見します。グリグリの演奏に魅了された香澄は、キラキラドキドキするものがバンドだと確信しました(夢が受け継がれました)

 

コミュニケーションが苦手な有咲は、香澄の猪突猛進さに根負けしつつ、香澄のランダムスターに対する優しい姿勢を見てバンドに入りました。引っ込み思案な自分を変えたいと思う臆病なりみは、ステージに立ちきらきら星を歌う香澄の姿勢を見てバンドに入りました。他者を必要としていなかったおたえは、みんなと演奏することの楽しさを知りバンドに入りました。バンド活動を諦めていた沙綾は、香澄との喧嘩やスタビに心を撃ち抜かれて、再びバンドに入りました。このようにしてPoppin'Partyのメンバーが集まりました。

 

後半は、オーナーの「やりきったかい?」という発言から、やりきるということに焦点が当たります。ここで、「やりきるということは最低限のバンドとしての連帯・5人でバンド活動をする意義を見出しているかであると考えます。

8話までのポピパは、ただ集まっただけにすぎず、それぞれの向いている方向性がまとまっていませんでした。これをオーナーに見透かされ、やりきっていないと評価されてしまうわけです。練習することで克服しようとしますが、やりきることと演奏の上手さに関係は無いため、やはりオーディションに合格することはできませんでした。この流れで香澄の声が出なくなってしまいますが、前へススメを5人で歌うことで香澄の声が回復します。*1 香澄の声はポピパ内の齟齬を象徴していて、前へススメを作曲することでバンドとして連帯することを理解し、やりきることができたんですね。

 

やり残した課題

1期にはやり残した課題が2つあります。それがキラキラドキドキの理解共犯関係からの脱却です。

 

そもそもPoppin'Partyは香澄の夢を叶えるためのバンドとして結成されました。香澄の夢は、夜空の星々に見出したホシノコドウを感じてキラキラドキドキしたいというものでした。香澄はバンドを結成後、SPACEでライブをすることがキラキラドキドキすることだと信じて行動していますが、このキラキラドキドキという概念はまだ他のメンバーには浸透していません。これがやり残した課題の1つ目、キラキラドキドキの理解です。

 

キラキラドキドキがメンバーに理解されていないのでは?という懸念が実際に歌として反映されているものがあります。それがどきどきSING OUT!という香澄のキャラソンです。このキャラソンは1期より少し未来の香澄が書いた詞とされています。*2

この中で香澄は誰にも見せない涙をこらえてキミに伝えたいことがある。と言っています。“それが真っ直ぐに夢を描き、「涙→キボウ」行きの電車に乗って前だけ見つめること”でした。「だけ」というのはネガティブな言葉であり、前を向かなければ涙で溢れてしまう、それほど追い詰められている、という裏返しではないでしょうか。夢は「キミともっとつながりたい」ということでした。

 

2つ目、共感関係からの脱却は根深い問題です。先程、4人が香澄と関係していく中でいかにしてバンドに加入したかを説明しました。これはこれで素敵な理由ですが、ポピパ(香澄)の理念に共感したわけではありません。

アニバタでは、これを“香澄の自己中心的な欲望に気がつかないことで、有咲は自分の欲望を満たそうとするのです。(中略)これはポピパの他のメンバーも同様である。”と解釈されています。有咲は友人を作ることに満更ではないため、香澄の欲望を見逃し共犯関係を結んだんですね。これは他のメンバーも同様で、メンバーはそれぞれポピパに求めるものが違うということです。4人は香澄とwin-winな関係を築けたためにバンドに参加していますが、これではバンドとしてのキズナは弱いままです。より強固な関係性へと発展させるために、この共犯関係からの脱却も重要なポイントとなります。

 

イベスト2章と2期…キラキラドキドキの変化

1期にやり残した問題点が表面化してしまったのがイベントストーリー2章でしょう。

ちょっとした齟齬により(後に、お互いがポピパのことを想っての行動だったと説明される)、ポピパがバラバラになります。残ったのが香澄と沙綾だけになったとき、沙綾の過去の経験から、この悲しい出来事を二度と起こしたくないと香澄に自分の真意を伝えます。沙綾の気持ちを受け取った香澄はメンバーと話し合い(たえは単独行動していただけだった)、一つの結論を導きます。

 

それが、「私(香澄)のキラキラドキドキはみんなのキラキラドキドキだった」ということです。つまり、キラキラドキドキは「何かが始まる予感」であり、それがmyからourに変わった、ということでした。*3 先程ポピパの夢は香澄の夢であり、それが伝わっていないことが課題と書きましたが、香澄のキラキラドキドキが「私」から「私たち」に変化したことで、ポピパの方向性が定まる契機になったといえます。

 

同様にポピパの方向性を考えるストーリーが2期でした。主催ライブをしたいと意気込みますが、湊さんに覚悟が足りないと言われてしまいます。これは、ポピパのやろうとしていることが明確ではないということだと考えます。六花が“「ポピパさんはポピパさんです!キラキラしていて楽しそうでステージで演奏する皆さんを見ていると、どんどん楽しい!って気持ちがすごく伝わってくるところがすごく…!」”と話すように、ファンからは見えているポピパの良さが、5人に共有されておらず、そのためにポピパらしさに迷ってしまうのでした。

 

ガルパに出てくる4バンド回を通してポピパらしさを考えるもうまく行かず、ポピパに足りないものが練習だと決めつけ、キズナを軽視したのがおたえの騒動でした(路上ライブという発想自体は良かったのに!)。

元々たえは“バンドを始める前は一人でいることが多かったが、みんなと一緒に演奏することの楽しさに衝撃を受け、Poppin'Partyに参加。”しています。*4  しかし、イベント2章が示すようにたえは単独行動が目立ち、ポピパを考えて行動していたかといえば必ずしもそうとは言えません。2期11話についてはこちらで書いた通り、RASに練習に行っただけ(でポピパを離れるつもりは無かった)のに、たえの真意が伝わっていなかった為メンバー間に不信感が溜まってしまった、悲しい事件でした。*5

イベントストーリー2章もアニメ2期も悪役はいません。有咲もたえもポピパを想って行動していました。しかし、結果として騒動に発展してしまった。これはポピパのために行動することが何なのか、共有できていなかったからだと考えられます。

 

まとめます。
イベントストーリー2章もアニメ2期も、アニメ1期にやり残した課題を解決するものでした。具体的には、香澄の夢やキラキラドキドキを理解して、ポピパらしいバンド活動をすることでした。イベントストーリー2章では、「私(香澄)のキラキラドキドキはみんなのキラキラドキドキだった」と香澄が表明することで、キラキラドキドキが5人に共有されたかのように見えました。しかし実際はたえだけ単独行動をしており、問題を認識していなかったといえます。

アニメ2期ではこれが表面化し、1期と同じように練習に拘り、また2期9話では香澄が音楽を捨てるという最悪の行為をすることで文化祭は失敗します。しかし、ポピパらしさの原点・キラキラドキドキに立ち戻ることでこれを克服し、解決しました。

 

Appendix Poppin'Partyの概念

ここからは少し妄想チックな話をしていきます。アニメ3期の話についてはこちらのリンクからどうぞ。

 

キラキラドキドキとホシノコドウ

キラキラドキドキ・ホシノコドウとは一体何なのか。ここでは少し踏み込んで解釈します。また当ブログでは、小説版ポピパとアニメ版ポピパは登場人物の設定や経験した出来事は異なっているものの共通した概念を持ったパラレルな関係と定義します。

 

春剣防具さんは、星の鼓動は世界との一体化であると指摘されています。つまり、“香澄がまだ幼い頃、都会の喧騒から離れたキャンプで見上げた満天の星空。星々の明滅と自分の鼓動が重なり合い、自分自身が星々と、そして世界と一体化したような感覚を覚えます。”これを香澄は小説版にて“世界の秘密を知った気がして、体の奥がもしゃもしゃとした”と説明しています。

私はこれを読んで、中村航先生の作品「星に願いを、月に祈りを」を思い出しました。

シンプルな法則によって廻る、小さな小さな閉じた世界。 そんな水槽を見ると、ボクはわくわくしてしまう。それを見つめるとき、ボクは大いなるものを見つめている気になるんだ。

中村航. 星に願いを、月に祈りを (Kindle の位置No.652-654). 株式会社小学館

 「星に願いを、月に祈りを」でも、「きらきらきらきらー、と君は浮かび上がります。」!!!これが関係してないと言えるのだろうか!
「星に願いを、月に祈りを」を基に、さらに解釈します。

 

身体が星と同期したとき、君と宇宙は分かつものがないと語られています。宇宙の風に吹かれて、僕らは宇宙そのものです。けれども、これは星に飲み込まれた(ことを想像している)からではありません。僕らはそもそも世界と一体化しているのだから、隣の友達と手をつなぐことは、宇宙と繋がることなのではないか、と考えられるんですね。

宇宙はどう解釈できるのか。シンプルな法則は、宇宙は光の速度で膨張していて僕らは光速の船に乗った存在である、だけです。時空という名のコップで浮かんでいるだけの存在です。

 

であるならば、外部は存在しない。当ブログでは、希望と外部の関係について以前考察しました。*6 ブログでは、現代社会的な理由から外部が不在となり、その中で希望を考えるのであれば潜在的な現在を考える必要があるというものでした。日常という内部には、私たちが拾い残した可能性の原石が眠っていて、その原石に真摯に向き合っていけば、そこから今の私たちにはない外部、希望が出現するのではないか?という考え方です。ポピパの非日常の力は日常ではない日常と解釈でき、潜在的な現在に目を向けるきっかけとして利用できるというものでした。

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一方「星に願いを、月に祈りを」では、宇宙そのものが外部不在のため、その中で希望はどう考えていけばいいのでしょうか。その答えは本の中で示されています。

観測するまでは確率の波として漂う量子力学的なミクロな世界と、遠くを見ることは過去を見ることと同値であるマクロな世界の狭間で、私たちの世界は成り立っています。*7 そんな手の先にあることを考える前に、手に届くような距離にある大切なものを私たちは取りこぼしたりします宇宙に比べたら遥かに近い誰かに願いや思いは向けられる、だからこそ人は流星に願い事をするのかもしれない、ということだそうです。

 

まとめます。①私たちはそもそも宇宙だったという気づき、②宇宙には外部が存在しないという気づき、③希望は外部があって存在するものであり、外部不在の中で希望は存在するのか?⇒普段隠されている潜在的な希望を探究すること、④宇宙はミクロからマクロまで広大だが、まず私たちは身近な誰かに対する願いや思いに向き合うことが肝要であること、という思想がありました。

以上の考察から、香澄の感じたホシノコドウは大切なものに向ける願いや思い、キラキラドキドキはそれを持っている心の状態あるいは掛け声、であると考えました。

戸山香澄がこれを一瞬で理解したんですね……笑

 

地球は誰のものかって?

そんなことより I love you

涙はひとつ 落ちて……

イニシャル 作詞: 中村航 作曲: 上松範康

さばとらさんは、イニシャルの歌詞にて“「地球は誰のものか?」や「人類愛とは何か?」といった非日常的な概念を直接的には分からなくても、身近な人への想いといった日常的なことを拡げていった先で、それらにたどり着くのがポピパらしさの一つかなと思います。”と述べられています。ミクロな世界とマクロな世界の狭間で生きる私たちは、そんな手の先にあることを考える前にまず身近な人の願いや思いを考えることが大事ですよね。イニシャルの歌詞の涙は「星に願いを、月に祈りを」の流星を指しているのではないかと思います。

戸山香澄にとって夜空の星々は世界や宇宙の真理に近づくことでした。それは、大切なものに向ける願いや思いの存在を知るきっかけになりました。そんな世界があることを知ったキラキラドキドキに溢れる彼女には、結果としてポピパのメンバーが集まりました。イニシャルは戸山香澄が再確認したお話なのでしょう。

 

STAR BEAT~ホシノコドウ~

バンドリ!におけるホシノコドウについてもう少し考えてみます。小説版では沙綾が香澄に助言する形でホシノコドウを喚起させています。

沙綾「香澄ちゃんはどうして変われたと思ったの?」(中略)

沙綾「人はそんなに変われないと思うの。なにかを乗り越えたと思っても、実際、乗り越えたのだとしても、またつまずくことはある。うまくいったり、いかなかったり……。つらいことも起こるし、思いがけないことも起こる……。人生は魔法じゃないから」(中略)

沙綾「だから何度でも歌うんじゃないかな」(中略)

沙綾「大切なものとは、何度だって出会えるんだよ。何度だって思いだして、何度だって乗り越えればいい。何度だって、昨日の自分にサヨナラすればいいの」 

BanG Dream! バンドリ 著: 中村航 P282-284

ホシノコドウが大切なものに向ける願いや思いを知ることであるならば、バンドリにおいては、その可能性の芽を摘まないために何度も原点を思い出す必要がありました。それがポピパの楽曲群であるといえそうです。また、香澄は“「歌われるべき歌を放りだしたら、歌が可哀想だから…」”とも言っており、歌の重要性を理解しているようです。

 

逆に歌の力を軽視したのが2期9話です。歌われるべき歌を放棄し、たえを追いかけたポピパに待っていたのが、文化祭ライブの失敗でした。たえの気持ちを理解していなかった香澄はおたえはRASに行く方が最良だとおそらく考え、ポピパから踏み出せないおたえに対するエールとしてスタビを歌ったのだと私は解釈しています。しかし、スタビを聞いておたえの浮かんだ情景は1期の回想シーンでした。このすれ違いを何とかしたくてスタビの返歌としてReturnsを作曲したのではないかと思います。*8

 

CiRCLING

nagiさんはCiRCLINGについて“循環しながら新しい場所へと向かうこと”という中村航先生の言葉を引用し、人と人との繋がりもCiRCLINGであると述べられています。

また春剣防具さんは、“世界との一体化は原点であると同時にポピパの目指すべき最終到達点”であると指摘されています。“Poppin'PartyとしてCiRCLINGを広げていき、音楽のチカラで、巡り続ける世界を包み込み、世界と一体化する――あまりにも遠大で壮大ですが、間違いなくそれがポピパの志している目的地です。そしてこれは、原点=最終到達点、つまりは始点と終点を繋ぎ終わりのない形にするという意味でもCiRCLINGの概念を踏襲したものです。”

 

当ブログでも“CiRCLINGの環の概念、すなわち「循環しながら新しい場所へと進むこと」には2つの意味があると自分は考えています。1つ目はアニメ1期や2期3話で説明されている通り、夢が次の世代へと廻り続けるというものです。”と指摘しており、ポピパがグリグリから夢を受け継ぎ、2期では六花(RAS)に夢が受け継がれた点を指摘しています

輪はそれだけでなくキズナの和を内包しているとも考えていて、“「香澄に共鳴したバンドメンバー」から「誰一人欠けてはいけない仲間たち」への転換だと考えています。”と指摘しています。*9

 

CiRCLINGについて、公式からはっきりと明言されている点は少ないですが、これから何か概念が付加されるのでしょうか。

 

時間の概念

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ポピパの時間の概念については過去のブログで、“Roseliaみたいに「フィーチャーワールドフェスという最終目標があってそれに向かって練習している」という時間軸ではなくて,「ポピパがポピパ足りえる原点となる過去があって現在はその過去の集合体であり,未来はその現在の集合体」という時間軸だと捉えています.”と考えました。*10

キズナミュージック♪について以前、“キズナミュージック♪における過去とは楽曲群であり標識であると考えます。ポピパがいつまでも原点を忘れないのは標識があるからだという考えです。そして標識の集合体がポピパの歴史です。未来は現在の集合体ですが、地図を繋ぎ合わせた後であれば自ずと道が示されるということでしょうか。”と考えました。*11

 

最近では、Jumpin'において望遠鏡で見通す先に未来の“希望”がありましたが、ミライトレインでは線路が未来へと続くほど未来は明確になり、ポピパが同じ景色を夢見て走り続ける仲間に変化したことが示唆されるようになりました。

また未来と夢の関係について、センケイさんは、
“「この夢の先まで 一緒に進んでいこうね」夢が達成された先にも未来を延長でき、関係性もまた続けられることがここで改めて確かめられます。
こうした演奏する時間の延長線を確かめつつ、5人は〈いま、ここ〉を楽しむ姿勢をうまく作れていったようです。”と指摘されています。

つまり、夢が達成されればまた夢を作ることで未来を延長できる、この繰り返しによってポピパの現在は、キラキラだとか夢だとか~Sing Girls~で歌われている永遠になるということです。

 

アニメ3期…BanG Dream!

 

 共犯関係からの脱却

アニメ3期では一転してポピパらしさに溢れていました。
1期の課題として共犯関係からの脱却がありましたが、これを作詞や作曲と絡めて考察します。共犯関係というのは香澄の欲望をごまかすことで自身の欲望を満たそうとすることでした。しかし2期までで香澄の夢がみんなの夢に変化したため、共犯関係である必要性が無くなりました。

 

みんなの夢を叶えるためにメンバーそれぞれが主体的に行動する。これが共犯関係からの脱却と定義するのであれば、作詞や作曲はまさに主体的に行動した生成物といえます。

りみ…私の心はチョココロネ・Home Street
たえ…Returns
香澄…Dreamers Go!
沙綾…Step×Step!
有咲…ミライトレイン

 

また、キラキラドキドキが共有されたことは、「日常を切り取った写真」を集めたMV作成を通して象徴的に描かれていました。その中で挑む武道館ライブは、ポピパの方向性が明確に一つになったことで生まれた夢の一つだと考えられます。

 

RoseliaとRAS

RoseliaとRASはそれぞれ問題を抱えつつも3期にて克服したように見えました。

Roseliaは「Roseliaに全てを賭ける覚悟はある?」と問いかけながらも、それぞれ私的な理由を隠し持っていました。RoseliaRoseliaを追い求めるが故、身の回りしか見えていませんでしたが、3期ではオーディエンスの存在を認識することで、Roseliaの世界が広がったように感じました。つまり、あくまでRoseliaRoseliaの音楽を追い求めるのですが、そのためにはあらゆるものを経験として蓄積する必要があり、その中でオーディエンスが可視化されたのでした。

一方、RASは孤独なメンバーの集まりです。チュチュとチュチュに引っ張り上げられることで救われるメンバーとして描かれ、その主従関係がデフォルトでした。メンバーとの対話を行うことでこれが解消され、円陣を組むという描写はその象徴として描かれていました。

 

まとめと4期

3期までで1期までの課題を克服し、夢を撃ち抜いたように見えます。しかし、伏線としてりみの不安やキズナミュージック♪の歌詞による示唆など、不穏な面が見られます。

切ないSandglassでは天空さんが指摘しているように、アニメ1期~4期と春夏秋冬が対比されているのでは?という考察があります。3期のMVでは春として香澄、夏としてたえ、秋として武道館ライブを主導した有咲が映っていました。4期では誰がピックアップされるのか楽しみですが、冬が終わりの象徴であれば少し寂しい気がします。

Breakthrough!では逆に、これからの活動にやる気を感じさせます。
これからの展開は全く読めませんが、今後も楽しみですね。

 

Appendix キズナミュージック♪の考察

以前のブログで扱った考察です。

 

ポピパ3n理論

ポピパの1st~3rdまでの旧バンドリ、4th~6thまでの新バンドリの表題曲がそれぞれ対応しているのではないか?と仮説を立てました。その後のリリース楽曲からTime Lapse(7th)は次のステージへと進む曲、二重の虹(10th)がポピパ2章を踏まえて新たなポピパを歌った始まりの曲となっています。

このことから、ポピパの表題曲を3つひとかたまりのワンセットとして考えて、それぞれが起→承or転→結となっているのではないか?と考えました。この表題曲を3つワンセットにして考察する考え方、旧バンドリと新バンドリを対応させる考え方をポピパ3n理論と勝手に名付けました。

今回のキズナミュージックは12thの表題曲であり、結の部分です。従って、二重の虹(10th)、ガールズコード(11th)を踏まえたまとめの曲となっているはずです。

 

ポピパにとっての夢とは

ズバリ、(現時点では)5人の絆を深めあうこと、愛と平和を歌い広めていくことだと考えます。

順を追って説明しようと思いますが、その前に夢と聞いて思いつく動詞と言えば「叶う」があります。ポピパの楽曲で沢山夢という単語が出てきますが、「叶う」は一度も出てきません。これはなぜでしょうか?代わりに「撃ち抜く」という表現をされることがあります。

 うち ぬ・く [3] [0] 【打(ち)抜く・打ち貫▽く】
( 動カ五[四] )

厚紙や板金などに型を当て,強く打って,その型どおりの穴をあける。 「プレスで鉄板を-・く」

境界になっているものを取り除く。ぶちぬく。 「二間を-・いて祝宴を催す」

予定どおり最後まで続ける。 「ストを-・く」

(多く「撃ち抜く」と書く)弾丸などがつらぬく。 「たまが壁を-・く」

 「撃ち抜く」とは境界になっているものを取り除くことであり、すなわちバンドリとは、夢の障害を取り除く物語であるといえます。「叶う」では実現・未実現であり、達成が重要です。ゴールにたどり着いてしまえばそれまでです。一方、「撃ち抜く」では境界になっているものを取り除くことですから、例えば実現するまでの過程であったり、実現後の維持をどうするかであったりなど、達成度に対する解釈の幅が広がることになると考えます。

 

最初の夢は何だったでしょう?最初の夢はポピパ5人でバンドがしたい!という夢だったのではないでしょうか。

エバン(1st)、スタビ(2nd)、はしキミ(3rd)は小説版文脈で書かれた曲です。イエバンは文字通りバンドリの名のもとに始まった物語に関する曲。スタビは沙綾をバンドに迎え入れるため、小心者の香澄がこれからどうしたいのかを歌にした曲。はしキミはポピパとして活動を始めてから作ったポピパの決意の曲です。

一方、ときエク(4th)、キラ夢(5th)、前へススメ(6th)はアニメ1期文脈で書かれた曲です。ときエクはアニメに合わせたバンドリの物語の始まりの曲。キラ夢はポピパが目指すべき到達点の曲。前へススメは、香澄に対する応援の曲です。

前へススメは、その物語の流れ上、夢=「SPACEでライブをすること」、と誤解しがちですが、“夢はみんなのもの”とあり、時系列的におかしいことがわかります。

小説版では有咲が香澄の歌にこう感じています。

 これは絆(キズナ)をつなぎ、夢を撃ち抜こうとする"物語"だ。だって、この子の歌がつなぐ、心と心が見える。

BanG Dream! バンドリ 著: 中村航 P112

 小説でもアニメ1期でも香澄が一人ずつ説得してバンドメンバーを増やしていきます。その過程で悩んだ様々な障壁を乗り越えた物語がまさに夢を撃ち抜いたといえるでしょう。

 

では、これでバンドリの到達すべき目標まで辿りついたでしょうか。多分違うと思います。なぜなら、小説の引用を思い出すと、「絆をつなぎ」夢を撃ち抜く物語だからです。5人が揃ったとしても絆がなければ意味がありません。

アニメ1期でオーナーがオーディションで不合格にした理由はなんでしょう。これは絆が足りなかったからに他なりません。CHiSPAは4人で話し合ってSPACEでライブをすることを決めます。ポピパは闇雲に練習量を増やしても到達するべき目標が不明確でした。香澄の声が出なくなった後、4人は絆の大切さを知りお互いを支えあいますが、香澄だけは気付けませんでした。結局、合格になりましたが、香澄が4人の方向へ向かったかどうかわかりませんでした。

 

その不十分なまま、Time Lapse(7th)、クリスマスのうた(8th)、CiRCLING(9th)へと進みます。Time Lapseで歌声=星=回り続けるものであることが示されます。クリスマスのうたで“愛と平和の歌”を歌うというポピパの方向性が見えました。
CiRCLINGは二つの曲を踏まえたまとめの曲となっています。

まって! 放したくない!

この夢だけは ちょっと(ちょっと)

CiRCLING! 回り続ける

キミとわたしの物語は

(中略)

世界を勇気づける Love song

CiRCLING 作詞: 中村航 作曲: 岩橋星実 

 CiRCLINGの持つ詳しい解釈はnagi1000337さんのこちらこちらの記事がとても参考になりました。この物語が循環しながら新しい場所へと向かって行く、ポピパ5人の絆を深めていく物語であることが示されていると考えます。

ポピパがポピパ5人それぞれの理解を深めていくように働き、絆を深めていくのと同じ方法で、世界に対して働きかけた場合、それは愛や平和を届けることと同義になるということだと思います。その行動を勇気づけるものがポピパの音楽です。

 

ここで、不十分であることが表面化されてしまいました。二重の虹(10th)、ガールズコード(11th)です。二重の虹はポピパ2章を踏まえた歌ですが、

結論として、

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キラキラドキドキ=夢=今

私たちがキラキラドキドキするものが“今”であることが明確に示されました。これによってポピパの夢がポピパ5人の絆を深めることだということが香澄たちに共有されました。今までは夢に対する方向性が5人でバラバラでしたが、夢に向かう方向が統一されたといえるでしょう。ポピパ2章はそうした成長を示したストーリーだったといえます。

キラキラドキドキが夢だと断言していますが、これは3n理論的にSTAR BEATがホシノコドウであるように、キラキラ だとか 夢 だとかが Sing Girlsだからです。
(何かの想いを胸に)歌う彼女たちが夢そのものであるといえそうです。

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時間が有限であることが示された

当たり前にあると思っていたこの瞬間は有限であることが仄めかされていました。これがガールズコードへと続きます。進級することで環境も変わり今まで通り活動することが難しくなってしまいました。

キズナミュージックはこうした文脈上でのまとめの曲です。

 

キズナミュージック♪とは歴史

 キズナミュージック♪

ただひたむきに 追いかけていた

胸の奥の思い 気づいたら

(みんなで)地図を広げて

キボウの道を ジグザグ進もう!

キズナミュージック♪ 作詞: 中村航 作曲: 藤永龍太郎 

 「ただひたむきに」マイナス表現です。それぞれの夢がバラバラで統一感が無い。この状態がアニメ1期までのポピパを表していると考えます。しかし、もしお互いの胸の奥の思いに気づくことができたら、初めて地図を繋ぎ合わせてキズナを深めることができ、キボウの道(未来への道)を進めるようになるということでしょうか。“ジグザグ”は手探り感?

 

キラ夢では地図についてこんな表現があります。

かたく閉ざされた最後の(届かない)

とびら解き放つものはなに?(それはなに?)

夢の地図をぜんぶつなぎあわせて

“音楽(キズナ)”という魔法の鍵を見つけること!

キラキラだとか夢だとか ~Sing Girls~ 作詞: 中村航 作曲: 藤永龍太郎 

とびらとは前へススメで“ポピパに対する好きという気持ち”であることがわかっています。この境界を撃ち抜くのが夢の地図をつなぎあわせ→ポピパ5人の気持ちを理解して、絆という音楽を奏でることです。

これを踏まえた先がタイトルにある夢の向こう側へと向かうことです。ポピパ結成が夢であったが、その夢は叶った。しかし、結成してもお互いにわからないことがあり、実際、2章の問題もあった。さらに時間が有限であることもわかった。こうした課題に対してどう向き合っていきましょうか、というお話の続きです。

キズナミュージックは他にも小ネタがあって、例えばdreaming→lasting friendsと示している)

 

(会えたね)標識のない

迷いの道も キミとなら行ける

キズナミュージック♪ 作詞: 中村航 作曲: 藤永龍太郎 

過去の楽曲群が標識となり、それがポピパ5人の共有する歴史となっています。過去の歴史である標識とキズナの証である地図を持っていれば、道(夢や希望)に迷ったとしても、みんなで行けるようになるということだと思います。

 

 

参考にさせていただいたもの

 

www.hyoron.org

 

ameblo.jp

 

halkenborg.hatenablog.com

 

sabatiger-memories.hatenablog.com

 

nagi1000337.hatenablog.com

 

a16777216.hatenablog.com

 

sky21phoenix.hatenablog.com

*1:香澄の声が出なくなるというシナリオは、旧1stで愛美さんの声がかすれてしまい歌えなくなったエピソードから着想を得たそうです。

*2:2019年10月14日のポピラジ愛美さんの発言にて。中村航先生からの回答だそうです。

*3:『キラキラドキドキ』という概念について https://ameblo.jp/rikkyo-bang/entry-12525618383.html

*4:https://bang-dream.bushimo.jp/character/hanazono-tae/

*5:RASの前身であるTHE THIRD(仮)にサポートギターとして参加されていた大塚紗英さんのエピソードから

*6:https://lativior381.hatenablog.com/entry/2019/10/05/203642

*7:沙綾のキャラソン「遠い音楽」とはまさに過去の音楽であった。

*8:https://lativior381.hatenablog.com/entry/2019/03/30/030436

*9:https://lativior381.hatenablog.com/entry/2019/02/04/025142

*10:https://note.com/lativoir381/n/n6fb51a852922

*11:https://lativior381.hatenablog.com/entry/2019/02/04/025142